軍用地の「倍率」とは? | 軍用地投資ブログ
2020年11月06日
目次
そもそも「倍率」とは?
皆さま、こんにちは。開南コーポレーション代表の新垣です。今回は、軍用地を語るうえで欠かせない「倍率」について、ご説明していきたいと思います。
軍用地の購入をご検討中の方は、もうすでにお気づきかと思いますが、軍用地の物件情報には必ずといっていいほど「倍率:●●倍」という記載があります。この聞き慣れない言葉が何を意味するかというと、地域や施設ごとに設定された「評価係数」とでも言えば分かりやすいかもしれません。
一般的な土地の場合、公示地価をベースにさまざまな観点から専門的評価を行い、それらをもとに坪単価を割り出すことが可能ですが、軍用地の場合、それは事実上不可能です。なぜなら、土地そのものが米軍基地や自衛隊施設の内側にあるため、現地確認しようにもできないからです。そのため、判断基準となる「倍率」という独自の相場が存在しているわけです。
実際に軍用地の販売価格がどのように決まるのかというと、「年間借地料×倍率」という形で算出されます。例をあげますと、年間借地料が100万円の軍用地の場合、その施設の倍率が30.0倍だとしたら、販売価格は「100万円×30=3000万円」となります。
倍率という言葉が生まれた背景
初回のブログでご紹介したとおり、戦後しばらくの間、強制接収された軍用地に対する金銭的補償は微々たるものでした。当然ながら土地の価値は低く、当時貴重品であったタバコや酒を得るために、二束三文状態で売りに出されることもありました。
しかし、経済復興とともに借地料が値上がりし、個人間での土地売買が活発になってくると、次第に「年間借地料の●●年分」といった形で値付け、取引されるケースが増加。軍用地売買が盛んになるにしたがって、こうしたスタイルが慣例化していきました。
このようにして定着した「年数表示」が、さらなる時の流れとともに「倍率表示」へと置き換わり、今日に至るというわけなのです。
倍率はどのように決まる?
結論からお話しすると、倍率は市場によって変化するものであり、特定の組織や団体によって決められるものではありません。早い話が、人気のあるエリア・施設の倍率は高く、人気のない土地は低倍率になるというわけです。
それでは、人気の集まる軍用地とそうでない軍用地はいったい何が違うのでしょう。今回のブログでは、そのあたりについても話をしていきたいと思います。
まず大前提として、返還の見込みが高い(または返還時期が決定している)地域や施設は人気が低く、返還予定のない地域や施設は人気が高いということが言えます。
もちろん例外もありますが、返還見込みの大小はもっとも分かりやすい基準のひとつであることに間違いはありません。これには、軍用地が基本的に長期間保有することでより大きな利益を生み出す資産運用物件であるという性質が大きく関係しているといってよいでしょう。
高倍率の嘉手納飛行場と那覇空港用地
嘉手納飛行場
倍率が非常に高い施設の代表例として、「嘉手納飛行場」や「那覇空港用地」が挙げられますが、なぜこれらが高倍率なのかといえば、やはりまず「もっとも返還されにくいであろう」という暗黙の了解があるからです。
極東最大の空軍基地とも呼ばれる嘉手納飛行場は、アメリカの東アジア地域における安全保障上の要衝といえます。管轄はもちろん米空軍で、防空・反撃・空輸・偵察・機体整備といった総合的な役割を担っており、約100機もの軍用機が常駐しています。また、3,700メートル級の滑走路を複数有するなど、その面積は日本最大の空港である東京国際空港(羽田空港)の約2倍にもなります。
このような特徴をもった空軍基地は、米空軍全体を見渡しても嘉手納のほかになく、同じ飛行場であっても「普天間飛行場」とは戦略的な重要度という意味ではまったくの別物。まさしく「替えのきかない」施設であるため、数ある在沖米軍基地のなかでも群を抜いて返還リスクが低いと考えられているのです。
那覇空港用地
一方の那覇空港用地ですが、こちらは嘉手納飛行場とはまた少し置かれている状況が異なります。というのも、土地の多くは民間航空機が離発着する空港としてすでに利用されており、沖縄と県外各地とを結ぶ拠点として機能しています。
つまり、すでになくてはならないものにとして存在している以上、当然返還のリスクは低いだろうと考えられているのです。
現実的に考えても、那覇空港が閉鎖または移転する可能性はとても低いですから、今後も高い倍率を維持する(または上昇する)ことが予想されます。
ということで、はじめて軍用地を購入されるという方は、まずはこうした施設を中心に検討を進めてみるとよいと思います。なかでも嘉手納飛行場は比較的倍率も低めですので、ビギナー向きの施設といえます。
注意点としては、いずれも品薄の人気物件となりますので、購入はまさに「早い者勝ち」状態です。お気に入りの物件に出会ったら、迷わず購入することをおすすめいたします。
主な軍用地の倍率一覧
これまで、軍用地の倍率と返還リスクの相関関係についてお話してきましたが、ここからは具体的にどれくらいの倍率で各施設が取引されているのか、一覧形式でご紹介していきたいと思います。
全施設を掲載するのは大変ですので、主だった施設のみの動向となりますが、参考までにぜひご覧ください(2020年10月現在、当社調べ:沖縄県内の複数の不動産会社の販売表示価格をもとに算出)。
ちなみに、不動産会社によって多少の倍率の違いがありますが、必ずしも「倍率が低い=売買総額が安い」というわけではありませんので、その点は注意が必要です。
というのも、比較的新しい軍用地業者(最近になって軍用地を取り扱い始めた一般の不動産会社など)は、仲介物件を中心に取り扱っていることが多く、倍率だけを見ればお得な感じもしますが、仲介手数料が別途かかるため結果的には高くつくというケースが少なくありません。
実際に、「某不動産会社で軍用地を購入したものの、後になって別途費用を請求された!」ということで、当社に相談されるお客様もいらっしゃいます。ですので、くれぐれも倍率の高低だけで物件や不動産会社の良し悪しを判断するのは避けていただければと思います。
返還予定地なのに高倍率?
前項では、主な軍用地ごとの倍率を一覧でご紹介しましたが、牧港補給地区(キャンプキンザーとも呼ばれます)の倍率が意外に高いと感じられた方も多いのではないでしょうか。
牧港補給地区は、平成25年に日米間で作成された「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」にも記載があるとおり、将来的に返還が予定されている施設です。にもかかわらず倍率が高いとなると、先に述べた「返還の見込みが高い地域・施設は人気が低い」という解説内容と、整合性がとれなくなってしまいます。
これはいったいなぜでしょうか?
その答えは、牧港補給地区のこれ以上ないほど恵まれた立地にあります。というのも、このエリア一帯は空港から近いだけでなく、美しい海浜に面し、さらには国道58号線に隣接しているということで、返還後の地価上昇が確実視されているのです。
跡地利用についても、浦添市による「牧港補給地区跡地利用基本計画」が策定され、産業振興地区・商業業務地区・住宅地区・公園緑地などの配置が具体的に検討されているなかで、よりいっそう期待値が高まり、いよいよ人気を博しているというわけです。
このように、返還見込みのある土地であっても、立地条件やその後の開発計画によっては逆に高値で取引されるケースもあるため、「高倍率=価値がある」と十把一絡げに考えず、個々人の投資目的に合わせて物件選びをすることが何より大切だと思います。
次回ブログへと続きます。
今日は、軍用地売買の専門用語である「倍率」について、基本的な解説をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。さらにもう一歩踏み込んで、金融機関の担保ランクなどについてもお話ししたかったのですが、そうなるとまた長くなってしまいそうですので、それはまた別の機会に。今回はここまでとさせていただきます。
それではまた、次回のブログをお楽しみに!