借地料と借地単価について | 軍用地投資ブログ

2021年02月05日

沖縄の軍用地について徹底解説。今回は借地料(軍用地料・地代・賃料とも言われる)について、さまざまな角度から分かりやすくご説明いたします。

 

 目次

 - はじめに

 - 倍率についてのおさらい

 - 不動産会社によって倍率が違う?

 - 同施設内における倍率の違い

 - 借地料について

 - 施設ごとの借地単価と値上がり率

 - 土地の種別と借地単価の関係

 - 宅地と宅地見込地

 

はじめに

 

皆さま、こんにちは。開南コーポレーション代表の新垣です。

前回、軍用地投資のデメリットというお話の最後で、借地料(軍用地料)が過去30年以上にわたって値上がりを続けていることについてふれましたが、今回はその「借地料」について、よりくわしくご説明していければと思っております。

 

倍率についてのおさらい

 

借地料のお話をする前に、ますは「倍率」についてのおさらいをしたいと思います。

以前のブログでもご説明したとおり、倍率とは、地域や施設ごとに設定された軍用地独自の評価係数のようなもので、土地の価格を算出する際に用いられます。特定の組織や団体によって決められるわけではなく、あくまで市場によって変化していく相場的なものですので、人気のあるエリア・施設の倍率は上昇し、そうでない土地は自然と低くなります。

 

不動産会社によって倍率が違う?

 

ところで、当ブログをご覧になっているお客様のなかには、おそらく他の不動産会社のホームページをチェックされている方もいらっしゃると思うのですが、会社によって(同じ施設であっても)倍率の表示が微妙に違うのを不思議に思われたことはありませんか?

これにはいくつかの理由が考えられます。

まず、相場より倍率が高く設定されている場合ですが、これは、軍用地を取扱い出してまだ日の浅い不動産会社によく見られます。というのも、軍用地の売主の多くは売買経験の豊富なベテラン地主であるため、新参の不動産会社が買取りを行うとなると、どうしても仕入れ値が高くなってしまいがちなのです。

次に、相場より倍率が低いケースですが、これは、仲介物件を中心に取り扱っている不動産会社に多く見られます。仲介取引の場合は手数料による収益が別途見込めるため、その分あらかじめ倍率を低く設定できるのです。ただしこの場合、費用総額としてはかえって高くつくこともあるので注意が必要。仲介物件をチェックされる際は、見た目上の倍率だけで判断せず、手数料を含めた価額で比較・検討を行うことをおすすめいたします。

なお、当社で取り扱っている物件は、基本的にほぼすべて自社物件(当社所有の物件)ですので、仲介手数料は一切いただいておりません。どうぞ安心してご相談くださいませ。

 

同施設内における倍率の違い

 

前項では、不動産会社によって施設ごとの倍率設定が異なる理由についてご説明いたしましたが、同一施設内の土地であっても倍率が違うケースが存在しますので、ここではそうした例についてご紹介していきたいと思います。

 

フェンスの内側と外側


 

その土地が基地フェンスの内側に位置するか、はたまた外側に位置するかによって、異なる倍率が設定される場合があります。以前の記事でもふれましたが、一般的にフェンス外の土地(いわゆる黙認耕作地)は返還される可能性が高く、人気もやや低め。そのため相場よりも若干低く倍率が設定されるケースがあるのです。

ただし、場所によっては返還リスクはさほど高くなく、返還されたとしても逆に価値上昇が期待できるというケースもあるため、一概に「フェンス外=高リスク」と決めつけてしまうのはいささか早計。さまざまな視点から、丹念にチェックしてみるとよいでしょう。

 

土地の用途と近隣の開発状況


 

その土地の用途・役割などから推測される返還リスクの大小、さらには、隣接地域の開発状況などから推測される返還後の地価上昇などが、複合的に倍率に影響してくる場合もあります。

例えば、嘉手納飛行場の場合、飛行場における最重要施設ともいえる「滑走路」付近であったり、北谷町の市街エリアに隣接した国道58号線沿いの土地であったりの人気がもっとも高く、不動産会社によっては相場の1~2倍程度上乗せするケースもあるようです。

なお、当社におきましては、軍用地初心者の皆さまにも分かりやすいよう、基本的に同施設の物件は一定の倍率にて販売しております。人気の場所だからといって、いたずらに倍率を上乗せすることはせず、相場の下限にあわせた設定をしておりますので、どうぞ安心してご購入いただければと思います。

 

借地料について

 

さてここからが今回の本題ですが、その前に借地料そのものについても、おさらいをしておきたいと思います。

借地料とは、国から地主に支払われる賃料(地代・軍用地料とも呼ばれます)のことですが、ベースとなる借地単価は、毎年、国と土地連(一般社団法人 沖縄県軍用地等地主会連合会)側との交渉によって決定されます。

 

借地単価が決まるまで


 

土地連は、各行政区域の地主会からの要請をまとめて国との折衝に臨むわけですが、交渉の結果、国から提示されるのはあくまで軍用地全体の借地単価であり、各施設ごとの借地単価が細かく提示されるわけではありません。

ですので、国からの予算提示を受け取った後、土地連はさらに各地域の地主会との調整を行うことになります。当初の要求額が満額提示されることはそうそうありませんので、各地主会の要求とうまく折り合いをつけながら、施設ごとの最終的な値上げ幅を調整していくわけです。

このようにして借地料は決定されていくのですが、ここ数年の軍用地全体の値上がり率は前年比プラス1%程度。ひと昔前に比べると値上がり幅がやや小さい状況が続いておりますが、それでも福利式に増えていくと考えれば、定期預金などに比べてよほどよい利回りであることはご理解いただけるかと思います。

 

施設ごとの借地単価と値上がり率

 

ここからは、施設ごとの借地単価や値上がり率についてお話ししていきたいと思います。

まずはじめに、以下の表をご覧ください。こちらは平成30年度の軍用地料の支払実績をもとに借地単価を算出したものですが、施設によってかなりの金額差があるのがお分かりいただけるかと思います。

 

主な施設ごとの借地単価の比較(「沖縄の米軍及び自衛隊基地 統計資料集 令和2年3月」を参照)。

主な施設ごとの借地単価の比較(「沖縄の米軍及び自衛隊基地 統計資料集 令和2年3月」を参照)。

 

借地単価は、基本的にその施設が位置する市町村および周辺地域の地価の影響を受けるため、都市部と非都市部の施設とでは、金額が大きく違ってきます。加えて、基地内の土地評価には米軍接収当時の地目がそのまま適用されているということもあり、北部地域にある基地の借地料はどうしても低くなってしまうのです。

また、以下の表は、ここ10年の各施設ごとの借地単価の推移を表したものですが、こちらをご覧いただくと、平均して110%以上値上がりしていることが分かります。また、一部施設の値上がり率が群を抜いて高いですが、これには、土地連による国への地域格差是正に関する働きかけが少なからず影響しているものと考えられます。

 

主な施設の借地単価の値上がり率の比較(「沖縄の米軍及び自衛隊基地 統計資料集 令和2年3月/平成23年3月」を参照)。

主な施設の借地単価の値上がり率の比較(「沖縄の米軍及び自衛隊基地 統計資料集 令和2年3月/平成23年3月」を参照)。

 

土地の種別と借地単価の関係

 

ここからは、さらにもう一歩踏み込んで、同一施設内であっても借地単価(およびその値上がり率)が異なるケースについて、くわしくご説明させていただきます。借地単価が違えば当然購入価格も変わりますし、値上がり率は利回りにも大きく関与しますので、しっかりと理解しておいていただければと思います。

 

元々の地目方式の評価


 

まず前提として、復帰以前の軍用地の土地は、基本的に「地目方式」といって、土地登記簿に記載された地目・等級をもとにして画一的に評価されてきました。

その後、基地周辺の地価をもとに算定する「土地価格方式」や周辺地域における生産率を基準とする「生産価格方式」が導入されたことによって、市町村・施設ごとに独自の借地単価を算定することが可能になりました。

しかしながら、依然として土地評価のベースとなる地目・等級は、米軍による接収当時のままであったため、とりわけ嘉手納以南の市街地に面した基地においては、周辺地域との土地評価の格差が拡大。周囲の地目は「宅地」であるにもかかわらず、基地内だけが「畑」や「原野」のまま据え置かれるというような状態がみられました。

こうした問題から脱却すべく導入されたのが「宅地見込地」という評価分類でした。

 

宅地と宅地見込地

 

軍用地の評価分類として後から加わった「宅地見込地」ですが、これはもともと、不動産鑑定評価の際に用いられる「土地の種別」に分類のひとつ。物件情報などでよく目にする「宅地」や「宅地見込地」のほかに、農地・農地見込地・林地などが存在します。

では、宅地見込地とはどのような土地かと言いますと、周辺地域が住宅地化されている、あるいは宅地化されることが十分に予測できるような場所にある土地。つまり、宅地への転用が可能な土地のことを指します。

次に、宅地と宅地見込地とではどちらの価値が高いのかという点ですが、これは当然のことながら宅地の方が評価がよく、借地単価をみても宅地見込地よりずいぶんとよい値が付いています。しかしながら、宅地見込地が不人気かというと決してそんなことはなく、物件自体の需要としては、宅地よりもむしろあるくらいです。

ではなぜこのような逆転現象が起きるのかというと、その答えは、借地単価の上昇率(値上がり率)にあります。というのも、ここ数年の宅地の借地単価の平均上昇率は年0.3%程度、対する宅地見込地は年1%程度とその伸び率には大きな差があり、宅地見込地の方が高利回りを期待できるということがあるのです。

また、別の角度からお話ししますと、国への値上げ要求における交渉材料として「地目による賃料格差の是正」が重要な役割を担っていることを考慮すれば、土地の種別や地目ごとの借地単価に大きな開きがあるうちは、こうした値上がり傾向は継続していくとも考えられるのです。

 

宅地と宅地見込地における借地単価や値上がり率について。

宅地と宅地見込地における借地単価や値上がり率について。

 

以上のことから、軍用地購入を検討される際には、ぜひ、その土地の種別が「宅地」と「宅地見込地」のどちらなのか確認いただき、借地料の値上がり率まで計算に入れたうえで判断いただければと思います。

また、周辺地域の地価上昇率をはじめ、将来的な都市計画に関する情報を収集しておくことで、さらなる借地単価の値上がりや返還後の地価上昇の可能性についてもイメージしやすくなりますので、あわせて精査しておくことをおすすめいたします。

 

次回ブログへと続きます。

 

…ということで、今回は施設ごとの借地料(軍用地料)の違い、また、種別(宅地・宅地見込地)による借地単価や値上がり率の高低についてご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。

特に、借地単価の値上がり率については、これから軍用地投資をはじめようという方にとっては重要なポイントだと思いますので、ぜひ覚えておいていただければと思います。

それではまた、次回のブログをお楽しみに!

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