地図・登記簿謄本・土地明細書の見方 | 軍用地投資ブログ
2021年04月16日
目次
- はじめに
- 航空写真の見方
- 公図の確認方法
- 次回ブログへ
はじめに
皆さま、こんにちは。開南コーポレーション代表の新垣です。
前回のブログでは、近年の軍用地料の動向をはじめ、目的や状況に応じた施設選びのポイントについてお伝えしましたが、今回はより実践的なノウハウをご紹介。地図や航空写真を確認する際の要点や、登記簿謄本・土地賃借料算定調書及び土地明細書といった専門書類の読み解き方など、よりいっそう物件を細かく精査していく段階で役に立つ、そんな情報をお届けしたいと思います。
現地確認がむずかしい軍用地
当ブログの読者の皆さまはすでにご存知かと思いますが、軍用地は基地敷地内にあるため、一般的な不動産物件とは違って現地確認をすることができません。
なかには、フェンス外(柵の外側)の土地など、実際に訪問することができる場所もありますが、こうしたケースはあくまで例外。施設によっては年に数回のイベント開催時に一部エリアを開放し、民間人の入場を許可しているケースもあるにはありますが、その時を見計らって現地確認をするというのは正直あまり現実的ではありません。
つまり、ほとんどの軍用地は現地確認をせずに購入の決断をしなければならず、そういった意味でも、事前の情報収集の質が非常に重要になってくるというわけです。
航空写真(衛星写真)の見方
物件の位置や立地を視覚的に確認するうえで、とても重要な役割を果たすのが航空写真(衛星画像)です。とりわけ最近では、グーグルマップなど、インターネット環境さえあれば誰でもかんたんに利用できる無料の航空地図が充実しており、これを活用しない手はありません。
また、たいていの場合、軍用地業者のホームページに、物件情報と一緒に位置情報がポイントされた航空写真が表示されていますので、まずはそちらを確認してみるとよいでしょう。
ただし前提として、その位置情報(座標)が正確でないとその後の判断に影響してしまいますので、その点については注意が必要。というのも、会社によっては位置情報の表記が非常に大ざっぱなケースもあり、今ひとつあいまいな場合には地籍併合図を確認しておくことが大切です。サンプルとして、以下によい航空写真の例と分かりづらい航空写真の例を挙げておきますのでご覧ください。
わるい例
理由:地図の縮尺が広すぎ、また、ポイントされた場所が広範なため、詳細な位置関係がつかみづらい。
よい例
理由:地図の縮尺が適当、かつ、ポイント範囲が狭いため、詳細な位置関係を把握できる。
また、物件があるとされる座標上に何らかの施設があれば、それは地勢の良し悪しを見分けるための重要な手がかりとなります。というのも、傾斜のきつい場所に建物や工作物が立てられることはほとんどないため、そこに建物があるということは、その場所が比較的平たんな土地であることを示しているからです。もちろん、実際にその場所に住むことになるわけではありませんので、これはあくまで、心理的な安心感を得るための手立てと考えていただければと思います。
それともう一点、注意していただきたいのが、物件とフェンスとの位置関係です。次のような条件を満たしている場合、その土地は(ほかの地点に比べて)返還リスクが少し高いと推測することができます。
・物件がフェンスから近い距離にある
・物件周辺に重要な建物や工作物が存在しない
・フェンス外側に交通量の多い道路が隣接している
・隣接地域で区画整理が進行中(または予定あり)
上記のように、施設の内側だけでなく、フェンス外側の状況にも意識をめぐらせ、近くに市街化区域があるか、過去に道路の拡張整理などで一部返還が行われたことがあるかなど、あわせて確認しておくことがとても大切です。
公図の確認方法
次に、公図の見方ですが、まず前提として、公図で確認できるのはあくまで米軍施設になる以前の土地の形状ですので、現況を知るうえではあまり役に立ちません。
しかしながら、万が一、その土地が返還されることになった場合、公図上の位置情報は非常に大きな意味をもってくるため、決して軽視してはいけません。というのも、元々道に面していた土地は、返還後も優先的に(大きな道路沿いなど)条件のよい場所に換地されることになっているからです。
ですので、返還時のリスク管理まであらかじめ計算しておきたいのであれば、航空写真上に公図が重ねて表示された「地籍併合図」を参考にして、物件の位置関係をしっかりと把握しておくことが重要です。通常、地籍併合図は不動産会社側で用意してくれますが、個人的に市町村役所で取得することも可能です。
なお、仲介取引の場合、売主側が公図の開示をためらうケースもあり、確認までに思わぬ時間がかかってしまうことがあるので注意が必要です。当社のように、自社物件を直接販売している専門業者なら、そのような問題は一切起こりえませんが、仲介物件を中心に取り扱っている不動産業者の場合にはそうした懸念があることも頭の片隅に入れておかれるとよいでしょう。
登記簿謄本(登記事項証明書)
続いて、物件の登記簿謄本ですが、こちらは公図上の地番が分かれば自身でも法務局(またはインターネット経由)で取得することができます。
もちろん、不動産会社側でも用意してくれますが、抵当権がいくつも付されている場合などは、売主によっては「はいどうぞ」と気軽には見せてくれないケースもあったりするので、公図同様、仲介取引の場合には時間がかかる場合もあり、注意が必要です。
登記簿で確認しておきたいポイントは、基本的には通常の不動産と同じく、売主と現在の所有権者が一致しているか、また抵当権がきちんと抹消されているかなど。そのほか、各種情報が土地明細書と合致するかどうかも確認しておいた方がよいでしょう。
また地目ですが、一般の不動産同様、畑や田といった農地扱いの地目の場合、基本的に農業従事者にしか売買や相続をすることができません。そのため、通常は売主側で地目を「雑種地」に変更しておく必要がありますので、その点についても確認しておく必要があります。
土地賃借料算定調書及び土地明細書
登記簿謄本とあわせて確認したいのが、軍用地ならではの書面「土地賃借料算定調書及び土地明細書」です。こちらは、毎年7月に各市町村の地主会から地主宛に送られてくるもので、軍用地の所有者であれば大切に保管しておかなければならないものです。
書面からは、下記の情報を確認することができます。
1. 所有者情報
・所有者住所
・所有者氏名
2. 施設情報
・施設番号
・施設名称
3. 契約情報
・契約番号
・整理番号
4. 土地情報
・所在地(市町村)
・所在地(大字)
・所在地(小字)
・所在地(地番)
・地目
・種別
・面積
・単価(借地料単価)
・算定賃借料(年間借地料)
書面を確認するうえで注意していただきたいのは、まずは土地の所有者や所在地が登記簿側と合致しているかどうか。また、ぜひ注目していただきたいのが地目と種別の両項目です。
地目については、登記簿と同様、畑や田んぼなどの農地が雑種地に地目変更されているかどうかを確認しましょう。なかには、謄本上の地目とは内容が一致しないケースもありますが、これは地目変更の状況が資料に反映されるのが遅れているだけで、物件自体に瑕疵があるわけではないので心配無用。もし記載内容に相違があったとしても、慌てずに、登記簿謄本側の地目評価を参照いただければと思います。
次いで種別欄ですが、先日のブログで「今後、借地単価の上昇が見込まれる」とご説明しました「宅地見込地」かどうかも、こちらで確認することができます。種別には、宅地見込地のほかに宅地・山林・原野などが存在しておりますので、利回り重視という方は見逃すことのないようご注意ください。
できれば現地確認も
ここまで資料の見方についてご説明してきましたが、紙面や地図だけでは心配という方は、ぜひ施設周辺を実地確認することをおすすめいたします。
実際に、小高い丘や建物などからフェンス内部を遠望できる施設もあるので、そんな場所を探して眺めてみるのもひとつの手。細かなことまでは分かりませんが、そこに実際に人が住んでいるかどうか、また、そこにある建物は頻繁に利用されているのかといったことくらいはみえてくるものです。
現場を訪れることで、必ずしも新しい情報が得られるわけではありませんが、購入を決意するための心理的な安心材料にはなりますので、お近くにお住まいの方は時間を見つけて足を運んでみるとよいでしょう。
また近年では、県外在住であっても、沖縄観光のついでに施設周辺を訪れてみるというアクティブな方も増加中。ほんの数十分程度、ご自身の目で周囲の環境を確認しておくだけで、購入後の安心感がまったく違ってきますので、お時間にゆとりのある方にはおすすめいたします。
次回ブログへと続きます。
今回は、航空写真や公図の読み取り方、また、登記簿謄本や土地賃借料算定調書及び土地明細書の見方についてご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
現地確認のできない軍用地の取引では、地図や登記書類などのわずかな情報の中から、いかにしてその物件特有のメリット・デメリットを正確に読み取り、その上で、冷静な判断を下せるかといったところが非常に重要です。
とりわけ物件の絶対数が極端に少なかったり、競争率の高い施設の場合、急いで購入しなければと思うがあまり、あせって判断を誤ってしまうことも。スピード感は確かに大切ですが、それ以前に、与えられた情報を読み解く力をつけておくことが軍用地投資には不可欠ですので、ぜひ今回の内容を参考にしていただければと思います。
次回は、ホームページや新聞紙面上に掲載された軍用地の物件情報の見方についてご紹介してまいりますので、どうぞお楽しみに!